人類、ゆっくり滅んでいってね!!〜バズー!魔法世界 普通プレイ

解説

伝説のクソゲーと名高い「星をみるひと」の会社が、倒産間際にリリースした作品。

星をみるひとといえば、

  • DQ/FFを始めとして、RPGは中世ヨーロッパ風ファンタジーという常識を破る、SF設定RPG
  • 人間=善という、勧善懲悪ではない、深遠な世界観
  • マルチエンディングを取り入れた、シナリオ展開*1

と1987年作という時代を考えれば、極めて斬新にもかかわらず、その評価を完全に覆すほどゲームバランス、システムが途轍もなくひどいことにおいて有名だ。

この「バズー!」もSFCRPG屈指のクソゲーの1つに挙げられるが、ただストーリーの素晴らしさは皆が認めるところだ。

ハリポタ世界的大流行後の現代ならいざ知らず、1993年時点で、純粋な魔法使いの主人公が専門学校で魔法を学ぶ展開を主軸におくのは進取性が高いと思う。

また、主人公は魔法使いを目指す前、別の職業についている(オープニングで選択)が、諸国を旅する途中、ちゃんと前職にちなんだ各地の感想をコメント(修道士なら宗教や伝説、農夫なら地質や農産物、船乗りなら港や川について)するのが面白い。重厚な世界観の確立と、キャラ立ちを両方配慮した、繊細なシナリオライティングだと感心する。

参照→バズー!魔法世界 セリフ

お遣いイベントをこなすうちにいろいろあって国家元首レベルの立場になってしまい(笑)、最終的には世界各国が一致団結して地底からの侵略者を退治する戦争に……。

と思っていたら、歴史は後から人間のよいように書き換えられており、その実、異形の地底人と見なしていた彼らこそ先住民族*2、地上の国々は彼らを地上から放逐することで領土を広げたという真実が明らかになり、それでも立場上、民族浄化の道を選ぶ……とか、その後、魔法文明が栄えた設定のこの世界で「魔法を放棄するか、世界崩壊か」の2択を迫られる……など、シナリオも分かりやすく筋が通っていながらリアルで重〜い。

現代の世界において環境破壊が取り返しのつかない状態だから化石燃料を使うなと言うのも、厳しい話だろう。

ゲームでは、非魔法使いの象徴であり、騎士であり直情径行の熱血漢である、主人公のいとこが「魔法なんてなくても」と主人公の最終決断をうながすが、今の世の中で「石油なんて」と誰が決断できるだろうか。

主人公は自らを犠牲に魔法を棄て、世界崩壊のピンチを一応は救う。だが、現実には、そういう決断はできまい。誰か1人の決断でそうできるほど世界は簡単ではない。

人間はお互いをにらみ合いながら、お互いをゆっくり滅ぼしあっていく。それが、ずっしりのしかかる良シナリオだった。ゆっくり滅んでいってね!!!

*1:と言っても、分岐が発生するのは最後の選択肢というレベルなんだけど。

*2:確かに、アメリカ人は先住民族ネイティブアメリカン)を人間扱いしなかっただろう。それが世界規模で伝播したものだと思えばいい。