ゲーム実況プレイ動画の目的と見方まとめ

ニコ動を実況プレイ動画のタグで検索すると、ヒットする動画数は20万件を超える。実況プレイ大流行と言っていいだろう。
では、ゲーム実況プレイ動画を、うp主は一体何のためにうpしているのか。また、それを視聴する人間としては、何を楽しめばいいのだろうか。あらためて整理しておきたい。

1.動画作成の目的

そもそも動画はプレゼンや映像作品等、大勢の視聴覚に訴える一方通行的な表現手段であったが、ニコ動においてはコメント機能等を利用した双方向的な対話手段としても用いられている*1

したがって、動画作成の目的は、以下の2種類に大別することができる。

  1. 一方通行的表現
  2. 双方向的対話

2.実況プレイ動画の目的(1)プレゼン実況

上述の通り、動画作成の目的は大きく2つあるが、この項では目的1. 一方通行的表現について触れる。

これはつまり、うp主は何かを表現するための手段として動画をうpしたということだ。それが何なのかは、以下の3要素で言い尽くすことができる(なぜならゲーム実況プレイ動画とは、文字通り「ゲーム」を「実況」しながら「プレイ」する動画であるから)。

  1. ゲーム:そのゲームを多くの人に紹介したい
  2. プレイ:自分の面白いプレイ(「テクニック」や「楽しさ」等の何らかの視聴価値があるもの)を見せたい
  3. 実況(実況者本人):ゲームを題材に、実況者自身のトークやネタを披露したい*2

どこを軸にするかは人それぞれだが*3

3.実況プレイ動画の目的(2)仮想友達実況

この項では1で述べた目的2. 双方向的対話について考えてみる。

視聴者とうp主との「双方向的対話」は何のためになされるのか。

結論からいうと、ニコ動においては単なるおしゃべりである。双方向の対話は、通常、情報や意見交換、議論等を行う場合が考えられる。だが、ゲーム等の情報収集であれば「ぐぐれカス」に増す助言はなし。意見交換・議論はニコ動のコメで成立することはまずありえない(うp主と視聴者というコンテンツをまたいだ非対称の関係があるので対話にならないし、仮に対話の意図があっても他の視聴者に「アンチうぜぇ文句があるなら見るな」と煙たがられるだけである)。

結局、実況者は、あたかも友達とおしゃべりをしながら一緒にゲームをプレイしているかのように、視聴者とともに楽しむというスタンスしか成り立ち得ない。

よって「より友達的な、あるいは友達になりたい実況者」が人気になる。ゲーム実況においては実況者は声や喋りで露出するので、声や喋りが魅力的な(なんとなく好み、レベルでもいい)実況プレイヤーに視聴者が群がり、彼もしくは彼女を中心に、一種の固定メンバーでにぎわうサークルのような状態になる。

そこにあるべきネタは極論すればゲームでなくてもいいのだ。

ただ、ゲームをするという行為が、

  • ゲームという既存のコンテンツを使用するので企画や準備が容易である
  • ただゲーム画面を映しているだけで、見た目に動きが生じ、動画を作ったような気になれる
  • 眼前のゲーム画面に見えるものについて話せばよいのだから基本的に話題も事欠かない

などの理由で、ニコ動にうpする上で向いているから、ゲーム実況動画が隆盛しているのだと思う。


4.実況プレイ動画の見方

  • その人が何のために実況をしているか(それは明白か)
  • それが巧みに遂行されているか
  • その目的が自分に合うか

が大体の基準である。

いきおい最初はその実況者が上述のどのタイプに属するかを見分ける必要がある。

上記(1)のタイプの実況者は、明確な意思を持ってプレゼン・トークしているのでぼんやり見ていてもコンテンツとしてできあがっていて面白いことが多いが、(2)のタイプの実況者はただゲームをやりながらヤマもオチもない話をひとりごちるだけであることが多い。そういう類は、声やトークの好みだけで決めればよい。

また、変則的な楽しみ方だが、私の場合、プレイヤーが、どういう思考回路でゲーム上の正解にたどりつくか、または、たどりつけないか(何を、なぜ、見落とすか)というのを観察していることがある。

たとえば、RPGの場合、下手なプレイヤーは戦闘画面で視野狭窄(画面上に表示される、重要なメッセージや数値を見ていない)になったり、限られた見識で物事を判断し情報収集・試行錯誤を怠る(新たに覚えた技とか魔法をあまり試さない)。私見だが、そういうタイプはなぜか女性が多い*4。そのくせ、そういう人は妙に細かいこと(特に人物関係)まで記憶していることがある。そういう人は、ゲームの進行度合はイマイチだが、シナリオや世界観に没入する適性があるのかもしれない*5

結局のところ、実況プレイは、人間性や思考パターンを映し出す鏡。実況者は喋れば喋るほど、ゲームをすればするほど、自分を晒す。それが魅力の一端とも思うところはある。

5.タイプ別オススメ実況動画

1. 面白い「ゲーム紹介」を主目的にした動画
  • mugaku
    • 主に「日本ではマイナーな洋ゲー」のFPSをチョイスするのだが、手馴れた解説、見やすい字幕と、ポイントを押さえたサクサクプレイが特徴。
    • 紳士的な淡々とした口調にもかかわらず、卑猥なトークがガンガンくる。自称「視姦スペシャリスト検定1級」裏筋の一本通った変態紳士である。


  • ときちく
    • 高画質で、映画のような、ドラマチックなFPSをプレイしているので、これも画面を眺めるだけで楽しい。
    • 特にこの人は「声実況」ではなく「字幕実況」なので、映画のような雰囲気のまま、シナリオが堪能できる。粋な配慮である。


  • ルーツ
    • 中2の頃RPGツクールで作った、自作のRPGをプレイするという「リアル中二病」「黒歴史」晒しという変則プレイ。
    • イデアだけですでに勝利。中2的な思考回路で作ったテキストは奇妙で不条理だけど、ツボにハマると何か面白いという、およそ反則技である。


2. 「プレイスタイル」が面白い動画
  • ボルゾイ企画
    • ビビりの友人に、ホラーとかサイコ系のゲームを「騙してプレイさせる」という鬼のような企画が面白い。大抵のことには慣れるから、無茶苦茶なリアクションは初回限りなんだけどね。
    • のび太のBIOHAZARD」はRPGツクールで作られたフリーソフトだが、ちゃんとホラーとして怖いことは実況者の反応で確定的に明らか。


*6

3. 実況スタイル、トークが面白い動画
  • 幕末志士
    • 坂本・西郷の2人組の「水曜どうでしょう」みたいな、何かとりとめのない喋りが、神がかり的に面白い。
    • 特に「奴が来る」シリーズ。ボケ役・坂本の機関銃トーク、ツッコミ役・西郷の誘い笑い。トークの巧さ、密度では実況者中随一であると思う。


  • obasan
    • 彼女のFF6実況は、「FF6」タグ動画で最高再生数を誇る。メジャータイトルすら実況動画が制覇することを表した、至高の実況クイーンである。
    • ラジオDJのような美声、端正な口調の他にも、動画編集、画質、小ネタまで完璧に作りこんである。同世代のゲーム好きにはたまらない。求婚弾幕が乱れ飛ぶのも無理からぬこと。


  • あにぃ
    • 口調も声も、あまりにも特徴的。どう聞いても幼女。受付嬢をしていて「一人で留守番偉いね」と電話で言われたのは、納得がいく。これが、合法ロリというやつか……!!!!
    • その声、口調のせいで、コメントが全員過保護になるという特殊効果。何か少しでも詰まれば「スクエニ、○○しろ!!」と発売元に対して怒号が乱れ飛ぶ。バカバカしいけど面白い。

4. 面白い仮想友達実況プレイ
  • 囲炉裏
    • イケメンボイスで、かわいいキャラの囲炉裏。でもロリコンなんだよね。
    • MGS等で有名になったスニーキング系の和風アクション「忍道戒」は、忍者なのに妙に大胆な動きと絶妙な腰抜けプレイに定評のある動画。


  • にしのん
    • 「西の女子」。きれいな声質で定評があるが、最近口調が荒い感じに。身内・友達感覚の強い実況のため、地が出てきた様子。
    • コメントでの「ネタバレ禁止」だが「アドバイスは求む」という女王様ぶりも、Mにはたまらないのでは。

*1:最近は、Ustream.tv等を利用した、個人によるストリーミング動画配信がにわかに活気付いて、動画を媒介にしたリアルタイムな、インタラクティブコミュニケーションが容易になってきた。

*2:たとえば、お笑い芸人が時事ネタを肴に笑いを取るように、ラジオDJが音楽を題材に軽妙洒脱なオサレトークを披露するように。

*3:実況ブームの火付け役にして実況界のカリスマ、hacchiについては、マイナーな超高難度の洋物ゲームを題材に、死にまくりながらも持ち前のゲーム勘と折れない心で、めきめき上達する様子を、軽妙な話術とともにドラマチックに見せるというスタイルで、「ゲーム」「プレイ」「実況」ともにバランスよく高水準で揃った、それでいて爽やかなストーリー性のある万人に奨められる名作だと思っている。もちろんニコ厨限定だが。

*4:視野狭窄で失敗するパターンは、ゲーム慣れしていても結構起きていそうだ。単に、ボス戦とかでテンパリやすいというだけかも……。

*5:「ゲームはシナリオがすべて」と言い切る人もいるし、もちろん、それも1つのゲームの楽しみ方だ。

*6:このゲーム「オペレーターズサイド」は「主人公に声で動作指示する音声入力型ゲーム」のため、プレイスタイルとモノマネ・トークが不可分である。ここでは、プレイスタイルとして分類した。