初音ミクの死と再生

電子の歌姫初音ミクは「メルト」によって葬り去られたか?

むしろ逆だ。あまねくニコニコ中に、あまねくユーザーの心の中にその威光は広まった。

初音ミクブームのもたらしたもの

諸行無常、盛者必滅。どんなジャンルにおいても、ブームはいずれ終わる。

何を、どのような影響を、どこに残せるか。それが、ただのブームとそうでないものとの差である。

初音ミクブームは終わったか。私はそれを裁定する立場にない。もしかしたら熱気に慣れてしまって、感度が落ちているだけかもしれない。

だが、確かにブームはあった。と後の人はふりかえって、そう思うであろう。

その前提で言うが、初音ミクブームの結果、ニコニコには、ある「文化」が根付いた。

ミュージシャンがオリジナル曲をうpし、それに共鳴した人間が「歌ってみた」「弾いてみた」をうpするという文化である。

メルト後の世界

初音ミクオリジナル曲で最も「歌ってみた」が盛況を極めたのは、言うまでもなく「メルト」。ニコニコ大百科に「メルトショック」という言葉が残されるほどだ。

「メルト」がスタンダードになったことでミク曲におけるキャラソンは存在感を喪う。

これによって人格神としての初音ミクの存在は希薄化し、むしろ、より一般的なるものとして、その影響を残すようになった。

やっぱミクよりも人間だよと思う人もいれば、ミクのための曲だからミクの方がいいと反論する人もいる。その結論はおくとして、ミクをスキにせよキライにせよ、無視しつづけることはできなくなった。

仮想の歌姫としての存在を超え、ニコ動における、歌、音楽、あるいはMMDなども含め、創作者にとっての自由の女神のようなシンボルとなったのだ。