上海不動産ミステリー(3)〜チャイナリスクは、実は安全弁でもある

「世界の工場」から次第に巨大市場として注目されてきた中国。日本の常識では考えられないほど強権的な政府による規制や介入も頻発する国だが、それがバブルを大きく弾けさせない安全弁として作用しているともいう。

 「確かにこの国は市場経済といいながら、実際には中国政府の手のひらで管理されている。でも、モノは考えようです。おかげでバブルが起こっても大きくはじけない。多少調整は起こるが、政府によってうまくコントロールされた世界もといえる。

 株式市場も過熱気味でやばいぞとなると、今年も突然5月に政府が取引税を3倍にしました。それを受けて、株価はドカーンと落ちました。政府は常に早めに施策を打っている。日本のバブルの轍をふまないよう、そうなる前につぶそうとする。政策変更が矢継ぎ早に起こるため、投資家には不安要素があるものの、徹底的にバブルがはじけないという安心感もあるのです。

 いま中国で起きている変化のスピード感は、日本の3〜4倍でしょう。いきなり来るとびっくりすると思います。日本人の経験則に比べ、時間軸がめちゃくちゃ短いわけだから。ではなぜ私がここにいるか。それは中国の文化が好きだとか、歴史に興味があるということではない。発展している国ならではのビジネスチャンスがあるからです」

高度成長時代の日本で地方の基盤整備を進める頃、田中角栄首相によって使われた言葉は「均衡ある発展」であった。かくて日本は地方の隅々までライフライン・交通網・産業が行き渡り、「一億総中流国家」と相成った。
一方、かつてブルジョワに宣戦布告した社会主義国家・中国は、今や、日本など比較にはならない超格差社会である。その象徴として、上海郊外に突如現れた、無人の英国式ニュータウンを題材に、中国で起こっている消費シーンを描いている連載が、「上海不動産ミステリー」。