米国ガソリン価格高騰の要因と石油精製能力のボトルネック
ガソリン高騰の理由にアメリカの石油精製能力不足があるというのだが……生産能力を増やさないのはなぜだろう?
と思ったらレポートがあった。PDFなので、HTML化されたGoogleキャッシュを、ウェブ魚拓+にとっておいた。
米国で最後に石油精製所が建設されたのは 1976 年で、それ以来 31年間にわたり新たな建設は行われていない。米国では石油会社 54 社が 33州において 149ヶ所の石油精製施設を運営しており、その多くはメキシコ湾岸地域に所在する。石油精製所が不足している要因のひとつとして、1980 年代以降の厳しい環境基準と地元民の製油所建設への反対が指摘されている。石油精製所は大気汚染物質の排出について、州や連邦政府から厳しい環境基準を課せられている。その結果、石油精製所建設認可が下りるまでに相当の時間がかかり、それをクリアしたとしても、地元民や環境保護団体の強い反対に直面する。こうした事情により、石油精製業界にはここ数十年の間に「精製所は新たに作るよりも既存のものを買った方が安い」との認識が定着してしまった。住民のいわゆる「NIMBY(Not In My Back Yard)(総論は賛成でも自宅の裏庭や近隣への建設には反対)」主義が、石油精製能力のボトルネックのひとつの原因であることは否定できない。
石油精製所不足のもうひとつの理由としては、石油精製品は少し前までは精製マージン(原油と石油精製品との価格差)が低く、業界は激しい競争と強力な労働組合とのさなかで非常に厳しいビジネス環境にあったことがある。そのような背景から石油精製業界は 1980 年代半ばから、経営戦略として余剰精製能力の削減に取組んできた。その結果、石油精製業界はここ数十年の間で設備投資を著しく減少させるとともに、どんどん在庫を減らしていった。1980 年代には在庫は 40日分を余裕でカバーできるレベルであったが、現在では 21日程度、稼働率は 1980 年代では 78%程度であったが、現在では 90%以上の稼働率が常であるという。また今日に至っては、Bush 大統領がガソリン消費の削減と石油代替のエタノール燃料を推進し始めたことを受け、石油精製業界は新たな精製施設の建設を渋っている。政権は今年 1 月の Bush 大統領一般教書演説に基づき、“Twenty in Ten”と題するエネルギー政策プロポーザルを発表したが、同プロポーザルは 2017 年までの 10年間に国内ガソリン消費を 20%削減することを目指し、それを実現するために①エタノールを含む代替燃料の利用拡大と②自動車燃費規制の強化を打ち出している。