奇跡の経営

via yojik*1

奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
リカルド・セムラー 岩元 貴久
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社員のコントロールを一切やめ、急激に業績を伸ばしたセムコ社の話だそうだ。

この会社には経営理念も就業規則も組織図も人事部も無い。一切のコントロールをやめるかわりに、社員を大人として尊重し、すべてを自主性にまかせることによって秩序を維持している。この会社が存続する目的は、売上や利益、成長ではなく社員を幸せにすること。
(中略)
会社は社員の幸せのために存在し、会社の目的と自分の目的は一致している。さらに会社が自分を信頼してコントロールをまかせてくれる。このような状況だったら、社員は全力でそれに応えるだろう。

労働とは何か。第一義的には生計の手段だ。生計を立てるとはお金を得ること。お金は、価値交換の媒介物。古典派経済学では、価値とは人間の労働が生み出すもの(労働価値説)。労働者は貨幣を通じ自分と他人の労働を交換*2している。

労働は価値を生み出す行為だ。価値は労働力の買い手である会社が評価する。価値の基準は、会社のミッションに対する貢献度で測られる。組織図がないなら、どうやって会社のミッションを社員一人一人の単位にブレイクダウンできるのか。組織と役割を与えられず、会社のミッションに対する貢献、すなわち労働の価値そのものを適正に評価することが可能なのか。これらが存在しなければ、よほど忠誠心が高く、創意性があり、何も指示されなくても目に見える成果をガンガンあげてくる社員ばかりでないと成り立たないのではないか。

極論を言うと「オイそこのお前、やり方とか組織とかそんなもんどうでもいいから、とりあえず1億円稼いでこーい」って「ハーイ」っつって1億手にして帰ってくるヤツ。ベンチャーの創業メンバーぐらいにしかいなさそう。

*1:芥川龍之介「侏儒の言葉」を引用するセンスが渋い。

*2:そのおかげで、我々の多くは自分で服を縫製したり野菜を栽培したり家を建造したりしないでいい。