日本の縮図――優秀な社員を多く抱え利益が出せない日立

大前研一氏のコラム、買収・売却であぶり出された日本企業の姿の一節。

 日立については、とても大会社とは思えないようなエピソードもある。コスト削減のために日立がやっていることをご存じだろうか。実は昼休みに建家の照明を消しているのだ。日本の最優秀の人材を集めて考えたコスト削減案が、照明を消すことなのだろうか。暗い社屋で時間を過ごしている優秀な社員の姿を想像すると、わたしは情けない思いに駆られる。

 わたしは最近、日立から講演会の依頼を受けた。当然、講演費を伝えたのだが、「それは高くて出せない。でも、話はしてほしい。OBのよしみでひとつ」などと言うのだ。ちなみにわたしは全国どこでも同じ料金である。他のところは出せて、なぜ現金だけでも1兆6000億円も持っている日立が出せないのか。そのセコさが駄目だと思うのだ。この会社の潜在的価値はどのようにしたら引き出すことができるのか、それを聞き出せたら無限の価値があるはずだ。その機会をわずかな講演料をケチってあきらめるというところがすごいと思う。