能力と志向と性格

銀行業務検定を受験してきた。

実務とは無縁だが財務3級には興味がある。何と言っても「命の次に大事なゼニ」(ミナミの帝王より)を貸す相手を吟味する方法である。

だが、ここでは全然関係ない話をしたい(試験の話はまた機会があれば)。

銀行業務検定の試験会場では、氏名が印字された解答用紙が座席にあらかじめ配布されており、空席でも誰が来るか知り合いなら分かる。

団体申込の場合、会社の同じ部署の人が前後の席にいることが多い。ほぼ全員、最低限、名前と顔は知っている。

何気なく見た前の席の氏名に違和感を覚えたのは、その氏名が旧姓だったことによる。

この人は私の同期入社者と、結婚して改姓した(女)。仕事上通名を使う人はいるが、彼女の場合一度改姓してパブリックにしているので、離婚以外は再改姓する理由はない。

彼女は試験開始時間間際にやってきて、私は試験時間を30分くらい残して途中退出してしまったので、結局、一言も交わすことはなかった。本人に試験会場で話せる話題ではどうせないので、別に良かった。

帰ってから会社のグループウェアで本人情報の更新日を確認する(メールアドレスは氏名を元にしているので改名すれば更新情報が残る)と、更新日付:2007/1/16とある。

なるほど、新年早々になあ……。とやけに納得している自分の姿がいる。

言っちゃ悪いが配偶者の彼は破滅型であった。

酒宴のたびに限度を超えて泥酔し、胃の内容物を全て標準出力に吐き散らすノー・フューチャーな男である*1。昔なら結核とかで夭逝する、石川啄木系の正しき破滅型詩人タイプ。どう考えても家庭生活に不向きだ。詩で死して名を残せたらまだしも、理系だからなあ……。

それにシラフのときは、滅法気を遣うしマジメなのである。繰り返すが彼の本質は繊細で敏感な詩人だ。

体育会系の人が、なぜ社会に出ると強いか。根性とカラダを鍛えているから? それだけではない。(特にラグビー、野球、サッカーなど集団競技では)自分を「歯車」と見なすことに慣れているからだ。自己の内的感性の世界を大事にする詩人タイプの人間は、その対極にある。ストレスを受けるとついアルコールとニコチンに救いを求める。彼は一生あの悪癖を辞められないだろう。

持って生まれた能力(向き不向き、適性、何ができるか)と志向(希望、あこがれ、何がしたいか)と性格(社会的人格、ペルソナ、人から何を求められるか)が噛み合わずに生きていくのは、不便でならない。それでも日々生きていくにはどこかを削るか、どこかを伸ばすしかない。

*1:ちなみに好きなミュージシャンはドアーズのジム・モリソン。参考:ジム・モリソン - Wikipedia