「相対論がプラチナを触媒にする」を読んだ

おもしろいテーマなのに、岩波科学ライブラリーで「高校生を含む一般向け」の書籍にしては直感的に理解させる工夫がなくて残念。

本書では、周期表の10族に縦に並ぶ Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)を比較して、化学的性質が似ているはずの同族元素なのに、何故ニッケルと比べて白金は幅広い反応の触媒として有用なのかということを理論的に説明している。

相対論効果について大ざっぱに。

  • 原子核に一番近い軌道の電子は原子番号Zが大きくなるほどその速度は光速に近づく。
  • 相対論により電子の見かけの重さが無限に近づく。
  • 原子核近傍の電子軌道半径が収縮する。
  • 原子核電荷遮蔽効果が高まり、外側の電子軌道半径は逆に広がる。
  • 電子軌道間にすきまができる。
  • 特に表面では原子が動きやすいので、これが原子結合の再配列をもたらす。
  • 再配列した原子は一酸化炭素などを非解離吸着すると再配列を解除する。
  • このとき活性の低い安定相から活性の高い準安定相へ変位する。
  • 準安定相は酸素を解離吸着する。
  • すっごい酸化還元するよ!

相対論効果を理論的に表したものはhttp://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/shinohara/study/SHE_chem1.htmlの「相対論効果とは??」の項を参照。リンク先は重元素についての記述だが、これがプラチナのような金属にも無視できない効果を及ぼす結果触媒反応が起こるというのが本書の主旨。

それにしても、100ページちょっとって薄すぎ。なんかいろいろ説明不足。安定相に再配列したプラチナ表面原子がなんで一酸化炭素など特定の分子を非解離吸着するのかってよく分かりません!!