欽ちゃんのトラブル処理に学ぶ
現代の我々の視点から見て、80年代からTV界の一線で活躍するさんま・タモリ・たけし等と比べ、トークが面白いわけでも博識でも司会が上手いわけでもお笑いのセンスがあるわけでもない、萩本欽一が未だに、なぜ多くの芸能人から敬愛され、大物然としていられるか、ようやっと分かった。
あれを人徳というのだ。
彼の巧みな所は、山本の事件の第一報を受け、即座にマスコミに球団解散を発表したところだ。マスコミは集団リンチが好きだ。いずれ「萩本にも責任が」と彼を叩き始める人間も現れる。
その前に彼は先手を打った。しおらしくテレビカメラの前で涙の一つも流し、球団解散するとまで言う。
そんな風にしている人間をマスコミは叩けないし、衆目は一気にひきつけられる。「解散までしなくていいんじゃないか?」と極端な決断を疑問視する声も数多く挙がる。
そこで前言を翻す。理由は「ファンの声が……」といえば、「お前、やめると言ったばかりじゃないか」とは誰も言い出せない。
今回の一件では、マスコミ・世論感情を巧みにコントロールして完全に誰からも憎まれない形で球団を存続し、かつ、山本をダシに宣伝までできてしまった。たぶん球団内の結束も高まったのではないか?
誠心誠意。それは大事だ。ただその伝え方は重要。極論をいえば伝わらない善意より伝わる偽善である。