演歌
言語的感情再現技術としての演歌
演歌は「音楽」ではありません。「うた」を聴かせるものです。
演歌の「うた」は語りです。語りとは言語による感情の吐露です。
つまり、演歌は、
- 言語的な
- 共感しやすい*1
- 定型の
表現技術なのです。
演歌の音楽的要素は極めて矮小化された西洋音楽のサブセットで*2、いわば「音楽」の要素は演歌にとっておまけ。メロディもコードも一本調子でよいのです。
逆に、欧米のポップスに慣れ親しんでいない国民にとっては、音楽性は感情再現にとって邪魔とすら言えます。
大衆が好むのは、自分たちの日常に合った下世話な享楽。ポップス以前の大衆にとってそれが演歌というものなのでしょう。
それがゆえに、大衆の音楽レベルの変化によって、演歌が崩壊の一途をたどる*3のは仕方ないことですね。
歌姫
作曲家に、その演歌の粋を集めたと言わしめたのが、前述の美空ひばり「みだれ髪」。
美空ひばりが永遠の歌姫たるゆえんは、演歌を好まない世代に対して、演歌を歌っても感動させてしまうところ。
演歌に限らず、音楽は小手先の技術の塊です。それを超越してしまう表現力。それがゆえに、広く愛されていたのでしょう。
まさしく不世出の天才だったのです*4。