「プロレス」のような魅せる実況プレイ

ゲーム実況動画はプレイヤーの魅力そのものが1つのコンテンツになる。

あらためて実況プレイヤーしーなの魅力について語ろう。

彼女の特徴といえば、

  • 可愛い外見のジョブ限定の『可愛さ縛り』で戦力度外視
  • 感情の豊かな、感受性の強い(キライな人にとっては、ちょっと痛い?)性格
    • 作中登場人物の死亡シーンに、マジ泣き
    • セーブデータのドット絵を遺影に見立てて、「おじいちゃん……」と語りかけ
  • 非常時の操作ミスや、敵の外見にビビって逃げるなどのおっちょこちょいな行動
  • 自分でも後で理由が分からないと言う、意味不明な判断
  • 買い物や宝箱に必要以上に執着する「欲しーな」モード

という、感情/感性先行、非論理的な、いわゆる女らしさ・可愛らしさのアピールばかりに気を取られがちだが、彼女はちゃんとプレイでも「魅せる」ところが偉い。

「魅せる」といっても巧緻な技術で唸らせるタイプの「魅せる」動画ではなく、気を引かれる、感情移入させられるタイプだ。

イライラするなよ! 絶対イライラするなよ!!

観た人の感情を動かす力があり、それが、良い方向にも悪い方向にも作用する。
つまりこういうことだ。

  • ゲーム操作の遅さや戦術の拙さ、ゲームシステムへの理解度の低さに「何やってるんだ!」とイライラさせられる
  • その一方で、「この先、一体どうなるのか? これで勝てるのか?」とハラハラさせられる

イライラもハラハラも「平常心でいられない」という意味では、根は同じ。ファンとアンチが同時発生するのもうなずける。

ちゃんと観る人の面白がるポイントを分かっている

苦戦を強いられても、それこそが醍醐味だと理解しているから、最初からGoogle禁止(攻略情報を見ない)や、BS1アクティブ固定*1、アビリティ「ぜになげ」禁止等というハードルを下げない。その心意気やよし。サービス精神は技術の巧拙とは関係ない。

それゆえ、再三の苦戦を承知で、LV上げゴリ押しせず自分なりに戦法を考える。その戦法が一向に当を得ず、ほとんどのボスで悪戦苦闘し、イラつきを加速するのもスパイスの1つ。

「縛り」プレイ*2ではないと本人は思っているようだが、標準的なゲーマー*3と比較して、本人の能力がある種の「縛り」として巧い具合に効いていると思って私は観る。

むしろ、選択肢を狭める論理的な「縛り」は、狭い選択肢の中での最適解一点突破が定石となり、それが効かない場合いつも運否天賦になってしまう。

プレイヤーの能力、つまり自然な学習によって解けて行く「縛り」の方が、人間的で面白いかもしれない。この場合は、プレイヤーが学習しないほど「縛り」が効いて楽しめる。

逆転!!! 剛運動画

上述の通り、ほとんどすべてのボス戦で苦戦しつつ、結果的に剛運のきらめきにより僅差で勝ちを拾うのもエンターテイメント要素の1つである。

凡ミスと思わしき行為はたびたびあるが、それさえも逆転要素とするドラマチックな展開を楽しませてくれる。

召喚獣カーバンクル使う → ヘイスガ反射してバハムートに → メガフレア連発バハムート自滅というバハムート戦の流れが大好き。

しかし何と言っても、フェニックスの塔での、「ニコニコ名勝負」のタグが貼られる動画は最高に素晴らしい。抱腹絶倒の一戦である。しーなが気に入らない人はこれだけ観ればいい。


ゲームを心から楽しんでいる

ゲームに没頭し、登場人物の死に際して涙を流すほど感情移入する彼女は、逆に、どれほど凹みモチベーションが下がっても、けっしてゲームに対する感情的な愚痴を漏らさない。

視聴者を不快にさせない、ゲームを純粋に楽しむ、この精神だけで十分尊敬に値する。

まとめ:彼女のゲームプレイは「プロレス」である

ストーリーやバトルの酸いも甘いも、ゲームの中の要素すべて、自分の力で、がっぷり四つになって取り組む。そして楽しんでいる姿、悪戦苦闘している姿をファンに見せ(声を聞かせ)楽しませる(後半では自分の動画のコメでヒントを得たりしていたが、それもしーなのファンなので、彼女の力の一部と考えていいだろう)。

喩えるなら、ちゃんと「プロレス」を演じているということだ。

「格闘技」は相手の技を封殺し傷つかず圧倒することが目標であるが、「プロレス」は相手の技を己の肉体であえて受け、筋書きに沿って互いにピンチやチャンスを演出して見せ場を作り、客を楽しませる、ショーの要素がある。

TASさんのような一分のスキもない、完璧で正確無比な超絶技巧を誇るゲームプレイが「格闘技」に喩えられるとすれば、彼女のそれはまさに「プロレス」である。

「プロレス」を見て「あんなもん観てらんねー。格闘技と違うじゃねーか!!」と言ってはならない。違うのだから。彼女にアンチが多いとすればたまたま格闘技ファンの多いところでプロレスをやってしまったためである。

全てのボスにレベルとは無関係に圧勝できる戦術が存在する、ボスを倒しても経験値が入らない、経験値取得の回避が容易などの理由から、低レベル攻略を代表とした様々なやり込みの題材として末永く愛されるゲームとなった。現在では、ほぼ全てのボスをレベル1のキャラ一人で撃破する戦術が確立されるまでに至っている。

*1:アクティブタイムバトルについてはウィキペディアを参照BS1はバトルスピードが最速の意味。FF5の戦闘ではコマンド選択中も時が流れ、敵が襲い来る設定にできるのだが、そのスピードが一番シビアな設定ということ。

*2:自ら行動制限を課すことで難易度を上げる、上級者向けゲームプレイ。

*3:もっとも、FF5SFCで発売された当時と今で比べると、ゲーマーの熟達度は歴然と違うと思う。