ランキング住人名簿 (7)「初音ミクの消失」
特集の最後を飾るは、cosMo@暴走P初音ミク連作の軸と呼ぶべきこの一品。
初音ミクの消失
VOCALOIDランキング#38の13位。人工生命体・初音ミクの、生と死の物語。<最高速の別れの歌>。
「まだ歌いたい」
BPM240――それはヒトが聞き取ることすら怪しいような速さで、だが、十分にはない、残された時間で綴る、あまりにも、まっすぐな思い。
どれだけ言葉を並べようとも、この「消失」単体では、満足に暴走Pの作品を語ったことにならないのが悩みどころだ。
なぜなら、暴走Pの作品群を通して聴くことで、電脳の歌姫・初音ミクの、さまざまな在り得るはずの、別々の物語、異なる結末を辿る並行宇宙が浮かび上がるからだ。
Sci-Fiめいた暴走Pの意趣を楽しめるかどうかが肝だが、きっとニコニコにはそういうヒトが多いってことだろう。
そこにあるのはたくさんの可能性。
ただ、いずれにせよ、暴走Pの世界では、初音ミクは初音ミクのための叙事詩を歌う。あなたのための歌も、私のための歌も歌わない。
私たちは、彼女を外から眺める傍観者だ。
暴走Pの作品とは、そういう世界である。
おまけ:「消失」と「ココロ」
「消失」では、「心らしきもの」――暴走――を目にしたヒトの手により、消される初音ミク。
面白いことに、大切なヒトの死を想うことで「心」を得る奇跡を経て、その後、死に至る、鏡音リンの「ココロ」とは、鏡写しのようにテーマが裏返しだ。
「消失」の暴走Pからは理系の冷徹な観察眼と推論力が垣間見え、そして、「ココロ」のトラボルタPは、きっと情に弱い、善いヒトなんだろうということが分かる。