ランキング住人名簿 (2)「恋は戦争」

短期集中連載。VOCALOIDランキングの住人紹介。
「メルト」に引き続き、しばらくryo無双でいくことになる。

恋は戦争

VOCALOIDランキング#38の19位。いわゆる222戦争の主役。


リンキンパークとかオルタナメタルを下敷きにしたロキノンシューゲイザーだがギター以外はエレクトロニカの影響が顕著で相変わらずリズム隊が複雑怪奇。
ryoの持ち味たる歌詞の中二臭さは健在だが、「メルト」より少し尖ったサウンドのためか、一歩人気が劣る。
それでも「初音ミクにシャウトさせる」という発想は斬新だったし、「あああああああああああ」というシャウト弾幕コメントがイントロで躍るように仕掛けられた非常にサービス精神旺盛な曲であり、門番で踏み止まっているのもうなずける。


「メルト」と作風をあえて変えたのはマンネリと刺激の周期を考慮してのことだろう。
「平凡と非凡」のバランスについては「メルト」の項で既に述べたが、人間は欲張りなので、いかに完璧にバランスがとれた素晴らしい作品でも、普通そればかりだと飽きてしまい、適度に慣れ親しんだモノ(マンネリ)と新しいモノ(刺激)の両方を求める。

サザンが継続してバラードとポップロックを交互にリリースするようなもので、いかに桑田のバラードに定評があるからといって、そればかりでは飽きる。いわゆるアルバムの隙間埋め、聞き流してしまうような曲にもニーズはあるのだ。

何しろ「メルト」の後だから「どんな曲を出したって注目確実」という状況下で、あえて、前作と違う点、また変わらない点を、はっきり表明して見せたのは創作者として腹が据わっているとしかいえない。

と同時に、大暮維人系のスタイリッシュでワイルドな絵を描くプロの漫画家・三輪士郎を起用するなど、事前のプロモーションが入念だったのは、一種の保険といったところか。大胆にして繊細。ここが、ヒットメイカーryoのうまさだ。


次曲「ワールドイズマイン」投入は、2月22日から約3ヶ月のスパンをおいた5月最終日。「メルト」と「恋戦」の期間も大体そのぐらいだが「メルト」の甘〜〜い味が忘れられないファンにとっては一日千秋の思いだったに違いない。
次回は「ワールドイズマイン」について解説します。