巌窟王――友情、裏切り、復讐

巌窟王を見終わって脱力感いっぱい。作画、脚本、演出、美術、音楽、演技、何もかもがトップレベルの素晴らしい映像作品であった。
本作のキーワードは標題の通り。友に裏切られ、鬼と化した男の復讐劇に翻弄される、愚直な少年の運命を描いた物語だ。
TV本放送のときはこの回を偶然目にして衝撃を受けた記憶があった。

「ところで上(天の川)を見てくれ。こいつをどう思う?」「すごく…綺麗です…」

全24幕の本作、復讐劇の本番が始まる回はこの第15幕。運命のターニング・ポイントである。

運命の歯車に手をかける瞬間、交錯する思いにむせび、嗚咽の声はほどなく哄笑に変わる。まるで逡巡を振り払うごとく。ダンディでセクシーで陰のある伯爵役・中田譲治の名演は壮絶。


第15幕を観て期待が芽生えたならば最初から観て損はない。特に主人公・アルベールの愚直ぶりは非常に楽しい。伯爵への心酔の前に、しっかり者の親友・フランツのアルベールへ寄せる想いは、まるで届かず、嗚呼すれちがい空回るエモーション、破滅の予感を伴ってなお微笑ましくさえある。
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21幕以降の怒涛の展開はなかんずく良い。毎シーンがクライマックスだぜ!
伯爵(巌窟王)の魔法が解けるのは、エデ(美女)の愛の告白ではなくて、アルベール(少年)の抱擁そしてキスなのだ。男同士のキスシーンで泣けるとは想いませなんだ。好きなものは好きだからしょうがないのだ。