通夜

今夜は同期入社の人の通夜だった。同年代の人の死は経験がなく信じられない思いだ。

死因を聞くとガンだという。以前、手術を受けた話は聴いたがガンだとは知らなかった。若年者のガンは進行が早い。転移していて手遅れになったのだろう。

死は悲しい。しかしそれはなぜだろう。死者にとっての死の意味を問うと宗教になるが、残された生者にとっての他人の死の意味を考えてみる。

死とは何か。死とはその人の喪失である。永遠にして絶対の離別である。そこにあの人がいた領域が、ぽっかりと空白になることである。

失うことは悲しい。会いたいけど会えないのは悲しい。だからその人に近しくて、もっと会いたい、一緒に生きていきたい、そう思う人ほど峻厳たる死の前に悲しみを覚える。そして折に触れて空白を感じてはまた故人を悼む。

死が悲しいのは人が人を愛するゆえなのである。

愛してその人を得ることは最上である。
愛してその人を失うことは、その次によい。
   
(ウィリアム・メークピース・サッカリ イギリスの小説家)