いじめは政治

彼らは、強い牙も爪も翼も身体能力も嗅覚も聴覚も持たない無力なサルの一種だった。

しかし、他の動物に見られないほど発達した大脳を持っていた。

彼らは群れを作り、知恵を出し合った。そうすることで個々より群れ全体として生存本能を満たすことができるからだ。

彼らは知恵を総結集させ、畏怖の対象であった偉大な自然に立ち向かい、やがてある程度支配し、制御し、利用できるようになった。

彼らヒトの群れは、社会と呼ばれた。

生存本能をヒトらしい言葉で「幸福」と表せば、社会は「最大多数の最大幸福」を追求するシステムだ。

だから、社会に害をなす少数をふるいおとすため社会は自浄作用を起こす。

多数の秩序を守る者のため、少数の秩序を乱す異端者を取り締まり、制裁を加えるようになるのだ。

もちろん制裁基準・内容は、公的良識に照らして広く認められる公正なルール(法)でなくてはならない。

しかし、ある範囲で法律より強力なローカルルールが優先してまかり通ることは、しばしばあるだろう*1

そのローカルルールの根拠と適用範囲がぐっとスケールダウンして、ある数人の決め付けや嗜虐心に基づいて特定の個人を攻撃するものだったら?

それは「いじめ」である。

いじめっ子は「この野郎をいじめてやれ!」という小さなマイ法律を作り、施行し、守らせる三権(立法・行政・司法)を一手に担う独裁者なのだ。

*1:たとえば、業界ぐるみで違法な慣習を押し通すような……?