紅藻とクロソラスズメダイに共生関係…京大が初確認

クロソラスズメダイが自分の食べるイトグサ属を栽培するという生態が分かった。

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 サンゴ礁の海にすむスズメダイの仲間・クロソラスズメダイが、エサとなる植物の紅藻を育てていることを、畑啓生(はたひろき)日本学術振興会特別研究員(サンゴ礁生態学)ら京都大の研究グループが突き止めた。

 この魚がいなくなると、この紅藻も生きていけないことから、双方が緊密に依存し合う関係であることも分かった。

 アリやシロアリなどがキノコなどの菌類を栽培する例はあるが、植物の藻類を魚が育てる事例が確認されたのは初めて。東京都内で29日から始まった日本進化学会で発表される。

 クロソラスズメダイがエサにしているのは、紅藻類のイトグサの一種。スズメダイの仲間の縄張りとなるサンゴ礁には、通常、様々な藻類が混在する「藻園」が点在しているが、畑研究員らは、琉球列島に生息するクロソラスズメダイが暮らす藻園に限って、他にはないイトグサが大量に繁茂していることを確認した。

 さらに、8年間にわたる現地調査の結果、「藻園」でエサにするイトグサ以外の藻類が成長を始めると、口を使って抜き取るなど、クロソラスズメダイがイトグサの生育環境を整備するような行動をとることを突き止めた。クロソラスズメダイが近寄れないようにすると、イトグサは消滅し、藻園は他の藻類に覆われてしまうという。

 畑研究員は「この魚の保護がないと、イトグサは他の藻類との生存競争に敗れるとみられる。こうした緊密な関係は、人が手を加えることで生育する栽培植物と人間の関係以外ではこれまで確認されていない」としている。
(2006年8月29日14時50分 読売新聞)