デスノートとジョジョの系譜

デスノート」は、第3部以降の「ジョジョの奇妙な冒険」のような「制限つき特殊能力バトル漫画」であった。

そろそろ「デスノート」が終わる。
ジャンプ最新号では、とうとう月がキラであることの自白にまで追いこまれた。クライマックスまで秒読みだ。

最近ヒットした少年漫画の中でも、「デスノート」という作品は、ひときわ異彩を放っていたのではないか?
なにしろ主人公が凶悪犯罪者で、トリックと頭脳戦で魅せるサスペンス・ストーリーだ。従来の少年誌の文脈ではありえない作品であった。

しかし、近年の少年漫画の流れをひもとけば、決して「デスノート」は突然変異的な存在ではなく、これまでの少年漫画表現の積み重ねの上に成り立っている。

作品名にもなっている「デスノート」とは死神のノート。名前を書くだけで人が殺せるノートだ。ただし、その効果には幾多の制限が課せられている。

・このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。
・書く人物の顔が頭に入ってないと効果はない。
ゆえに同姓同名の人物に一遍に効果は得られない。
・名前の後に人間界単位で40秒以内に死因を書くと、その通りになる。
・死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる。
・死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載する時間が与えられる。

この制限つき特殊能力の原点は、「ジョジョの奇妙な冒険」第3部以降に登場したスタンド能力に求めることができる。

スタンドは超能力の一種だが実体をもったものである。また、

  • スタンドは1人1体
  • スタンドはスタンドでしか攻撃できない
  • スタンドがダメージを受けると本体(使い手)もダメージを受ける
  • スタンドと本体からの距離とパワーは反比例する

といったルールが課されている*1

スタンド使い同士のバトルでは、第一に相手の能力を把握することが重要となる。
このため、攻撃を受けた側は、常に状況を観察し、ルールに基づいて「ハイパワーのスタンドだから本体は近くにいる」といった判断を求められる。
ルールの存在は、バトル漫画における必然であった「力のインフレ(スーパーサイヤ人のバーゲンセール)」という事態を打開、また、ルールの枠の中で勝つことで、漫画という虚構の中でありながら勝利に対する説得力、爽快感を生む仕掛けになっている。

デスノート」1巻で、主人公がデスノートのルールや適用範囲を調べるため死刑囚を殺すテストをするくだりがあるが、これは後ほどこのルールによって主人公が追い詰められるので、前もって読者とコンセンサスをとっておく必要があるからだ。

異色の少年漫画サスペンス「デスノート」は、「ジョジョ」という至高のバトル漫画の系譜上にあった。WJから「ジョジョ」が消えても、WJ内に残された「ジョジョ」の系譜は不滅であろう。

*1:最後の制限は、後に「ハンター×ハンター」でも、念能力のルールの重要なものの1つに挙げられる(制約や代償を増やすと力を強めることができる)。