博士の愛した数式

みてきたお( ^ω^)
http://hakase-movie.com/
記憶障害の「博士」と家政婦母子の奇妙な交流の物語。

10年前のある事故以来、新しい記憶が80分間しかもたないという「博士」。
周囲に目もくれず一途に数学を愛する変人偏屈な性格の「博士」だが、目についた数字からイマジネーションを受け、その深い数学の知識をもって数の神秘を語る彼の言語表現は、美しく哲学的、詩的である。

数学の神秘性を追求して新興宗教まで作った数学者ピタゴラス*1の気持ちが、「博士」には理解できるだろう。

そんな思考(と記憶)が浮世離れした人物「博士」と、ぎこちなくも暖かな友情を交わす明るく優しい家政婦(未婚の母)とその息子の日々は、うららかな春の自然と繊細な音楽に彩られ、まるで絵本のように幻想的で美しい*2

ところで、標題の「博士の愛した数式」とはオイラーの等式
eiπ + 1 = 0

のこと。この起源の異なる重要な2定数、円周率(π)とネイピア数(e)が、 極めて基本的な数、0, 1, i(数学的な仮想の、つまり人の心の中だけにある「虚数i」)が結びつくことで生まれる予想外の調和・連関の素晴らしさ。80分後には記憶から消え行く、ささやかな「今」という一瞬を肯定し、心の中にだけある「虚数i」のような真実を感じることが「博士」の望む生き方であった。

*1:http://www.h5.dion.ne.jp/~terun/doc/s3.htmlとかhttp://art-random.main.jp/community/04-010.htmlを参照。

*2:運命が二人を引き裂いたり再会したり泣き喚いたりする感動のドラマではないので、そういうのが好きな人は悪いことは言わないから韓流ドラマでも観ておくといい。