10月のマンガ総括

岡野玲子/陰陽師(13)

完結を言祝ぐ。
映画にもなって話題を呼んだ「陰陽師」。夢枕獏の原作は、都の妖を退治する陰陽術者・安倍晴明の軽妙な平安幻想絵巻である。
それが、マンガ版では、神秘的、詩的、象徴的、観念的なモチーフが物語を支配する、大変難解な作品となった。
物語が「世界観のインフレ」を起こしたと言ってもいい。
作者は平安京がなぜ縦横の幾何学模様なのかと疑問を抱き、それは九字の呪法であり、平安京はその設計基盤に、繁栄を祈念した呪術を施されていると結論づけた。それ以降、陰陽道の理、神仏・暦・天文、音楽を切り口に、作者は数と図形へ傾倒し、それは神聖幾何学の象徴として物語に現れる。
もう読者の90%が理解を放棄したに違いない。私ももう無理だ。でも美しい象り、神秘的なモチーフの織り成すビジュアル散文詩としては至高の一品だ。

【関連】http://d.hatena.ne.jp/popon-x/20051009

大高忍/すもももももも(3)

子作りを迫る武闘派押しかけ女房と妹キャラとめがねっこ委員長による主人公の獲り合い。
今回は、めがねっこ委員長が実は変態であることが判明。
否、羞恥心を感じれば感じるほど強くなる装束なのだ!!!!(そんなんアリか)
描写の思い切りがいい。シリアスな場面でも、必殺技は「目からビーム」だとか、それを「強い」の一言で済ませてしまうところとか、何気におもしろい。

それにしても作者は何者? 今時ある程度のメジャー誌掲載しているマンガ家であれば、何らかの形でWebサイトぐらい持つだろうに、Googleでも全く出てこない。それと新人なのに巻末のスタッフの数が多すぎる。H×Hの冨樫なんて一人で週刊連載持っているのに……。