世界中どこでも技術者は愛されている(多分)

世界中どこでも技術者は愛されている(多分)

キャディは言った。ジェントルメン、ついてないね。彼等は地元のライオンズクラブ主宰の『盲人にゴルフを』の会の盲人たちでさぁ。

技術者が口を挟んだ。だからヘタなのか。

政治家と牧師は彼を睨みつけて、キャディに先を続けさせた。

キャディは続けた。彼等は後ろに他の客が居るとは気付かなかった、誠に申し訳ないと言っていた。

その途端に技術者が手を打った。なるほど、そりゃそうだろう。

政治家と牧師は彼を睨みつけて、キャディに先を続けさせた。

キャディは続けた。どうぞ、先へ行ってくださいとのことでさ。

牧師は顔をまっかにして言った。神よ、お許しください。私はこれから毎木曜日に彼等のために祈ることにいたします。

政治家は半泣きしながら、しかしきっぱりと言った。いや、誠に無礼なことをした。確かに木曜日の午後に我々がプレイしようというのが間違いだ。これから木曜の午後は彼らのために解放するよう、市議会に働きかけよう。先ほどひどいことを言ったせめてのおわびだ。

技術者が言った。木曜の午後を彼等に明渡しても無駄だ。それより僕は夜中のゴルフ場を彼らのために開放することを提案する。そうすれば我々は木曜の午後を楽しく過ごせるし、彼等も心置きなくプレイに専念できるというものだ。

技術者の屈託の無い合理性に対比して、政治家・牧師の人情や道徳という名の気持ち悪さ、歪みが、巧く描き出されていますね。