Musical Baton 1

何回かに分けて書きましょう。

Total volume of music files on my computer (コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)

今は18MBぐらい。ほとんどなし。

Song playing right now (今聞いている曲)

國府田マリ子『My Best Friend2』
その名を知る人はあまり居ないだろう。

彼女は90年代を代表する萌えアニメ声優である!!!


――萌えアニメ声優の歌を聴いているッ!?
――正気かッ……!?
――くわばら、くわばら。
――キモッ。
――おかしいですよ! カテジナさん!
――半径3m以内に近寄らないでッ!
――謝罪と賠償を求めるニダ!


おお、神よ……。すべての人から唾棄され、突き付けられる、私を蔑む、罵る、禍禍しい視線。私は受難のキリストか!!

そんな重い十字架を背負ってまで、萌えアニメ声優の歌を聴く価値があるのか? 

答えは、――YES、だ。


声優ソング、それは市場の主流から常に対極に位置したジャンルだ。

そこに棲むオタクたちは、一般人より審美眼に優れるが、同時にオタクたるゆえんである、「萌え」のために、常に萌えと審美眼のハザマで揺れる。「冷静と情熱のあいだ」という表現が正しいか。

その葛藤の中に、メインストリームからは考えにくい、ある種エクストリームで、奇妙で、歪んだ、それでいて、ある種の造形美を極めた、キュートでポップでコケティックな、異形の抽出物が生成されるのだ。

私はそれらをこよなく愛する。


ガールポップの革命児・種ともこをリスペクトする國府田は、彼女自身ギターを弾くなど、本気で音楽に取り組んでいる。
その証拠に、スタッフは平成の鬼才・椎名林檎の右腕・亀田誠治井上うにを抱える充実の布陣!*1
声優が本業であり、声の表現力を持つ國府田はシンガーとしても優秀。
キングレコードの録音設備も、メディアミックスの波で90年代末にリニューアルされ、音質もかなり高い。
そこで生まれる名曲たちを、一言で表現するならば、「至極まっとうなガールポップ」だ。
一本調子な小室サウンドが市場を席巻する90年代、まっとうなポップスはアンダーグラウンドにしかなかったのだ。


いや、訂正しよう。おかしな表現だが、彼女のベストアルバム『My Best Friend』は1〜3、アニメ向けの曲もありながら、大概まっとうな、それでいて、どれをとってもおもしろい。

その楽曲はまっとうでありながら、メインストリームではありえない斬新さを放つ。
少女から娼婦まで使い分ける國府田の七色の声、多彩なスタッフによる七色のアレンジが最高潮に彩る本作(2)、ある意味で「甘い(椎名)林檎」と評しても過言ではあるまい。
『My Best Friend 3』で、國府田は作曲陣に無名の天才・泉川そらを迎え、さらにその色彩を強めていく。彼女のプロフィールについては後日紹介しよう。

*1:彼らクリエイターたちも、椎名林檎的「売れ線らしくない売れ線」が流行る前は、ルーチンワークで売れ線の曲ばかり手がけた時代があろう。そんな彼らには、何を書いても一定数売れるオタク市場は一種のパラダイス。そう、「スタンド使いスタンド使いにひかれあう」ッ!